4.3 究極の選択を迫られた時
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王暁田(X. T. Wang)
最も早く進化心理学を行動意思決定研究に応用した研究者の一人
研究テーマ
社会、組織、マネジメント、多文化環境における意思決定行動
リスク認知とリスク管理
意思決定の合理性原則
リスク行動と傾向の測定
消費と選挙行動
リスク意思決定の感情的メカニズム
進化心理学の枠組みの中で、彼の研究テーマはいくつかのレベルの問題と関連している
まず、人間進化の過程における典型的なリスクと課題に焦点を当てた研究
例えば、5つの進化領域のリスク尺度(Kruger, Wang, & Wilke, 2007)
アメリカのミシガン大学のダニエル・クーガーと、ドイツのマックス・プランク研究所のアンドレアス・ウィルケと共同開発
5つの典型的なリスク領域
集団内の協力と競争
集団間の協力と競争
自然リスク
配偶者選択と資源分配
繁殖のリスク
次に、人間進化の過程における典型的なリスクや課題の心理的特徴を探索する研究
例えば、認知的錯視と意思決定の誤りが、進化的に典型的な環境と非典型的な環境においてどのように現れ、また消えるのかを研究し、理論的に新しい展開を提示した(Wang, 1996, Wang, 2008])
リスク感応的な採餌戦略理論を用いて、意思決定の参照点としての最低要求水準を強調し、繁殖における分散としてのリスク仮説や、リスク下の意思決定の三つの参照点(目標、現状、ベースライン)理論を提唱している(Wang, 2002, Wang, 2008)
3つ目は、現在環境のもとで適応的心理メカニズムを触発、もしくは抑制する要因についての研究
例えば、ライフヒストリー変数(性別、年齢、出生順位、きょうだいの数、繁殖済みかどうか、繁殖目標の高低、寿命の主観的予測など)がリスク傾向に対する影響なども含まれている
4つ目は、適応的行動と直接関連するメカニズム(情緒的、神経生理的、代謝的メカニズム)についての検討
例えば、fMRIを用いて、意思決定においてリスクと関連する様々な社会的手がかり(リスクに関わる集団のサイズや人員構成など)を処理する脳部位の特定など
最近"Psychological Science"誌に発表された研究(Wang & Dvorak, 2010)では、時間をまたぐ選択における遅延割引の生理的代謝メカニズムについての研究が報告されている
遅延割引とは、人々が「将来を割り引いて考える」傾向を持つこと言う(=時間割引?)
即時にもらえる報酬と将来にもらえる報酬の絶対量が同じであっても即時の報酬を高く見積もりることや、相対的に少なくても即時にもらえる報酬を、より多くても将来にしかもらえない報酬より好むことを指している
彼は、身体的エネルギーの蓄積が将来と即時の報酬の相対的評価に影響を与えると仮定し、そうであれば血糖値のレベルが遅延割引に影響するはずであると考えた
実際の研究結果は、進化心理学的な仮説と合致し、身体的エネルギーの蓄積が多ければ多いほど、個人は遅延のある大きな報酬を好むようになる
エネルギー予算原則に基づくと、体内のエネルギーが十分なとき、個人はより将来を考慮した戦略を取り、繁殖の成功率を高めようとするが、代謝的に余裕がなくなると、個人はより現在の資源を重視する方向にシフトすることで自分の生存を確保しようとする
本文
大学院で医学から心理学に専門を変えた
標準的な意思決定理論で言うところの、期待効用の最大化をまったくしなかった
なぜ、標準的意思決定モデルは、意思決定公理や確率公理に反する私の判断(そして多くは他の人の決定)を予測も記述もできなかったのか
理由の一つは、現実の意思決定を生む直感は、論理的妥当性や合理的一貫性などではなく、自然淘汰と性淘汰によって作られたものだから
進化の視点でヒトの意思決定を扱う私の研究プログラムは、相互に関連する次の4つの要素からなる
1. ヒトの進化の歴史の中で何度も繰り返し現れたであろう、リスクと意思決定上の問題を明らかにすること
2. そうしたリスクと問題に対処するのに必要な特徴を見出すこと
3. リスク状況下で適応的な意思決定をもたらす(「もしAならBする」といった形の)生成規則やヒューリスティクスを調べること
4. 多種多様な選択メカニズムを駆動したり抑制したりする社会的、性格的、生理的な要因を検討すること
標準的な意思決定モデルは、合理的経済人(ホモ・エコノミクス)を想定している
この人は無限の認知資源をもって、ありとあらゆることの確率計算を行い、それによって期待効用(EU: Expected Utility)を最大化するものとされている
期待効用とは、様々な事象が起きる確率($ P)と、その事象の価値を($ u(v))をかけ合わせたものの合計
$ EU = \Sigma P_i \cdot u(v_i)
このような効用最大化の公式は、標準社会科学モデル(Tooby & Cosmides, 1992)と呼ばれる、ヒトの知性と合理性に関する伝統的な見方から生まれたもの
このモデルでは、心はまっさらな石版であって、そこには「経験」が書き込まれる迄中身はないに等しいと考えられている(Pinker, 1997)
このモデルの中心となる前提は、ヒトの学習、推論、意思決定の大部分は、どんな問題にも等しく使える汎用的な知性によってもたらされるごく少数の論理ルール、確率原理、そして合理性公理によって行われているというもの
しかし、ヒトの心がそのようなデザインを持つことは、進化的に考えるとありえない
適応を生み出すのは、こうした規範ルールではなく、生存と繁殖に関わる領域固有の問題だから
最近は行動経済学において、標準的効用モデルの問題点を克服しようとする試みが見られる
しかし、そこでは新たなパラメーターを追加して、意思決定データに合致する心理的メカニズムがあたかも存在するかのような議論をするばかりで、モデルをいたずらに複雑化させる一方、実証的な裏付けに欠けている(Berg & Gigerenzer, 2010)
社会環境や物理環境への適応という視点の欠如は、ヒトの意思決定への「心理―物理モデル」を目指す執拗な追求にも見て取れる
そこでは意思決定は文脈に依存せず、内容には無関係で心理過程は存在しないとされる
還元主義者の夢とも言える領域一般的な合理性のモデルでは、効用の最大化を目指す者は、様々な選択肢の中から最大の効用を持つものを選ぶことができるが、この効用の値は、それぞれの選択肢から期待される結果の分布という、生態学的に重要な情報を切り捨てて産出されるもの
ダーウィン的な視点からすれば、確率的結果と、その主観的価値は、繁殖上の適応度への影響によって評価されるべき
進化それ自体が、繁殖成功の分散を大きくする(リスクテイキング)、あるいは小さくする(リスク回避)プロセス
もしリスクを繁殖上の適応度の分散という観点から見れば、リスクとリスキーな選択は、経済法則だけでなく、進化と生物学の原則に基づく分析の対象ともなる(Wang, 2001, Wang, 2002)
繁殖場の利得の分散という概念は、いくつかの近年の進化的行動分析において、中心的な役割を果たしてきた(例えば、Daly & Wilson, 1997)
リスキーな選択を考える上で、社会的状況や環境成約を無視して、論理的一貫性と自己利益だけにフォーカスした公理的な計算が心理プロセスよりも優先するとしたモデルは、ヒトの直感をとらえそこねてしまうだろう
汎用無限合理性に依拠した意思決定モデルの熱烈な信奉者でさえ、自分自身の個人的な意思決定では、そのモデルに従わないといったことが生じる
Thagard & Milgram (1995)で紹介されている、ハワードのジレンマ
意思決定についての無限合理性モデルに疑念を抱いたハーバート・サイモンは、限定合理性という概念を提案し、意思決定問題の生態学的側面を、意思決定者の心理的プロセスと結びつけようとした(Simon, 1956, Simon, 1990)
「課題環境の構造と、行為者の演算能力という、二つの刃からなるハサミによって、ヒトの合理的行動は形作られる」(Simon, 1990)と主張した
それ以来、認知心理学は、ヒトの情報処理能力には限界があり(例えば、Miller, 1956)、時に記憶を誤り、また記憶に裏切られ(例えば、Schacter, 2001)、一貫した判断ミスや体系的な意思決定バイアスに陥りやすいこと(例えば、Kahneman, Slovic, & Tversky, 1982; Kahneman & Tversky, 2000)を明らかにしてきた
これらの研究は主に、情報処理における認知的制約、つまり限定合理性というハサミの一方の刃に焦点を当てたもの
別の行動科学の研究領域における近年の発展により、社会的及び生態学的制約を伴った、リスク下における意思決定についての研究に目覚ましい進展がもたらされた
行動生態学者たちは、採餌中のミツバチや鳥が、体に蓄えたエネルギー量をもとに、リスク感応的な意思決定や、かなり正確なベイズ的確率判断を行っていることを明らかにしてきた(例えば、Real, 1991; Stephens & Krebs, 1986)
進化心理学者は、ヒトの心が進化してきた典型的な課題環境を特定し、これを進化的適応環境(Environment of Evolutionary Adaptedness: EEA)と名付けた
ヒトのEEAは主に狩猟採集社会の環境であり、そこでは特定の認知的および情動的適応が求められた
こうした進化的視点からすれば、ヒトの心は、EEAに特有の問題を解決するための適応的ツールである、多数の課題特異的ヒューリスティクスや計算論的アルゴリズムの束からなると考えらえれる
EEAにおける具体的な問題
社会的交換、配偶、親の投資、集団内競争、集団間競争、血縁関係、道徳、採食などが挙げられる(例えば、Cosmides & Tooby, 1996; Gigerenzer & Selten, 2001; Wang, 1996a)
EEAにおいて繰り返し継続して立ち現れた課題は、人間心理を形成する上での普遍的な文脈だと考えられる
したがって意思決定の問題が起こる文脈が重要
このことを深く掘り下げるために、フレーミング効果と呼ばれる有名な非合理的意思決定バイアスについて考えてみよう
Kahneman & Tversky (1981)が初めてフレーミング効果を示した時の課題は、「アジア病問題」と呼ばれるもの
ポジティブフレームでは、参加者の過半数(72%)はリスク回避的
ネガティブフレームでは、参加者の過半数(78%)はリスクを冒し、確実な選択肢よりも、賭け(ギャンブル)となる選択肢を好んだ
カーネマンとトベルスキーの古典的なフレーミング効果が、非合理的な意思決定バイアスであり、認知的錯視とされるのは、それが期待効用理論の不変公理に反するため
不変公理によれば、合理的意思決定者は、同じ見通しを持つ選択肢であれば、それがどのように提示されるか、どのように表現されるかにyろあず、一貫した選好順位を持つとされる
私がこの課題の中で見出した、進化史において繰り返し現れた問題とは、協力と互恵性のための社会集団生活
常に小さな狩猟採集者の集団で暮らしてきた
そのため、アジア病問題で危機にさらされている人名の数が、隠れた重要な変数なのではないかと思えた
小集団における意思決定には集団サイズと血縁関係という二つの普遍的なデザイン上の特徴が関わっていそうだとわかった
集団サイズ
狩猟採集社会の集団サイズが100人を超えることはほとんどない。これは現代の狩猟採集社会も、化石記録からも言えること(詳しくは、Dunbar, 1988, Dunbar, 1993を参照)
ダンバー数: ヒトの大脳新皮質にとって無理なく効果的な社会相互作用を行える人数の上限は、約150人
一部の研究者は、面と向き合って付き合うことのできる小集団(15~30人の集団)こそが、淘汰圧の主要な対象だったと主張している(Caporael, Dawes, Orbell, & Van de Kragt, 1989)
血縁関係
ヒトは主として血縁関係と互恵関係によって構成された小さな社会集団で暮らしてきたこと(Knauft, 1991; Lee & DeVore, 1968; Reynold, 1973参照)
長期に渡るこうした進化的環境が、ヒトの意思決定メカニズムを親類縁者の関係と、集団サイズに関する手がかりにとりわけ敏感なものにしたのかもしれない
だとすると、危機に瀕しているのは誰なのかは重要な問題
新たなリサーチクエスチョン: 危機にさらされている集団のサイズが、フレーミング効果に何らかの影響を及ぼすのではないだろうか
三番目に、社会集団の文脈において、生死に関わる意思決定を行う際の(もしAならBといった形の)生成規則とヒューリスティクスについて仮説を立て、検証した
我々の仮説は、親類縁者向けの合理性は、EEAにおいて一般的だった生態学的および社会的手がかり、例えば集団構造やサイズに合わせて調整されている、というものだった
ヒトの情報処理戦略は、ある社会的状況における個人の集合体を、上記の手がかりをもとに「集団」として扱うようにデザインされている
つまり、ある「現実の集団」は、親類縁者の関係、もしくは数人(家族や友人)から100人(バンドまたは部族)程度の小さな集団サイズという、いずれかの特徴を付与される
人数がこの数値を超えると、行動選択方略は「生きるも死ぬも一緒」の原則から離れ、より利己的なゲーム的戦略に変わるだろう
社会的存在であるヒトが自動的に探し求めるのは、進化史において身近で、生態学的・社会的意義のある手がかりであり、例えば、血縁関係や捕食者、配偶機会のシグナルがこれにあたる
選択問題が文脈から切り離されると、意思決定主体にとっては意味が不明瞭になる
選択肢間の好みに関する不明瞭さを減じるために、意思決定主体は、手に入る二次的な情報を利用することになるだろう(例えば、声のトーンや、選択結果を表現する際の言語的フレーム)
社会集団のサイズは、その集団の構造と関係についての、有用かつ節約的な手がかりとなるだろう
集団サイズに関する情報は、集団メンバー間の社会関係、相互依存性、投資パターン、危機管理スタイル、序列や親和的関係の構造、他集団との関係、そして社会交換や互恵的相互作用における共有契約のあり方について、ヒントを与えるものとなる
集団サイズがもたらす暗黙的な知識は、リスク知覚とリスク選好に影響すると考えられる
私たちは一連の研究(Wang, 1996a, Wang, 1996b)によって、集団サイズ(生命の危機に瀕している人数の合計)をシステマティックに操作することで、フレーミング効果が現れたり消えたりするかを検討した。
集団サイズは6, 60, 600, 6000人のいずれか
実験の結果、問題となる集団のサイズを変えることで、フレーミング効果は大きくなったり小さくなったりすることが、安定した観察された。
古典的なフレーミング効果も確かに見られたが、それは集団サイズが大きく、メンバーが匿名で、そのため集団の成り立ちが曖昧な、600人または6000人の生命に関わる問題のときだけだった
集団のサイズが2桁に収まるとき、すなわち家族や友人などの集団で合った時には、フレーミング効果は消失し、回答者の過半数はどちらのフレーム、すなわち「助かる人名」でも「失われる人名」でも、はっきりとギャンブル的な選択肢を選好した
この小集団効果と血縁効果は、どちらも二つの構成要素から成る
リスク志向の高まり
フレーミング効果の消失
反対に匿名の大集団という文脈で、集団に関するより優先度の高い手がかりが失われると、意思決定主体のリスク選好の一貫性が失われた
リスク選好が曖昧になると、言語的フレーミングなどの二次的な手がかりが意思決定に用いられるようになった
これらの発見がきっかけとなって、多くの実験が行われ、この研究は200を超える研究論文や書籍に引用された
これらの結果は、期待効用理論の標準モデルから導かれる予測とはきわめて対照的
つまり、同じ形式の生死の問題では、同じ選考が見られるだろうという予測
期待効用理論の独立公理(Savage, 1954)によれば、もしある人が確実な$ \frac{1}{3}U(600)という選択肢を、ギャンブル$ U(\frac{1}{3}\times 600 + \frac{2}{3} \times 0)という選択肢よりも好むのであれば、その人は同様に$ \frac{1}{3}U(6)を、ギャンブル$ U(\frac{1}{3}\times 6 + \frac{2}{3} \times 0)よりも好むはず
つまり、標準モデルでは、集団サイズの効果は予測されない
しかし、意思決定における参照点に対するリスク分布を考慮せず効用が最大となるホモ・エコノミクスとは異なり、ホモ・サピエンスは、課題特有の参照点に対する結果の分布(リスク分散)に基づいて意思決定を行う
生死の問題における選択について言えば、6人集団の2人を確実に助ける(4人を確実に失う)という選択肢は、その集団の実質的な死を意味する可能性があり、それゆえ、最低要件を下回ることになる
このような、リスク感応的かつ参照点依存の意思決定メカニズムは、リスク希求的な選好を示すことになる
生死の問題におけるフレーミング効果の出現と消失については、別の説明も可能
600は6よりも大きい数字なので、選択問題の認知的負荷がより大きく、それゆえバイアスを見せやすいというもの
さらなる分析の結果、集団サイズの効果は単なる数字の大小と、計算負荷の問題とは考えにくいことが示された
第一にフレーミング効果は600人と6000人の大集団で生じ、6人と60人の小集団では消失した
しかし、600人と6000人の10倍差、6人と60人の10倍差が、選好に影響を与えることはなかった
さらに、Wang, Simons, & Brédart (2001)の研究で、フレーミング効果は60億の人命についての問題では生じたが、60億の地球外生命体の命についての問題では見られなかった
つまり、フレーミング効果は数字の大きさの問題ではなく、ヒトの集団サイズへの反応なのだ
より最近の研究では、ポジティブおよびネガティブなフレーミング条件におけるリスク選好への集団サイズの効果をもたらす脳内基盤の探求を行った(Zheng, Wang, & Zhu, 2010)
集団サイズが文脈上異なると、異なった神経パターンが見られた
全体として、大集団の手がかりは右半球の中前頭回(Right Middle Frontal Gyrus: RMFG)の活性化と関連しており、これは小集団手がかりでは見られなかった
さらに、RMFGの活性化の程度は、大集団に関する意思決定の際のフレーミング効果による典型的な選好変化を、正確に反映していた
ポジティブフレーム条件では、確実な選択肢を選んだ場合の方が、ギャンブル選択肢を選んだ場合と比べて、RMFGが活性化していた
ネガティブフレーム条件では、ギャンブル選択肢を選んだときのほうが、RMFGより活性化していた
ここから、RMFGがフレーミング効果の裏にある言語的手がかりの潜在的な認知処理を担っている可能性が示唆される
なお、RMFGは右半球におけるブローカ野の相同領域
対照的に、小集団文脈ではフレーミング効果が消失し、その時に右の島(とう)という部位に有意な活性が見られた
このことは、選好がフレーミングに左右されるものから、親類縁者に適用される合理的意思決定に基づく、一貫したリスク選好へと変わる、情動的切り替えが起きたことと一致する
Damasio(1994)のソマティック・マーカー仮説は、リスクの手がかりはソマティック・マーカー(身体マーカー)と、それに続く情動と感情を惹起し、それらが意思決定の必要要素として働く、とした
私たちの考えは、RMFGと島はいずれも、意思決定問題のフレーミングを符号化し、それに反応することで、言語的・社会的手がかりを、リスク状況における「もしそうなったら、どう感じるだろう」という身体的状態と結びつける、というもの
そのような感情に基づいた予測は、意思決定主体が危機的状況において、素早く、迷いなく反応することを可能にするだろう
進化心理学は、古典的な意思決定合理性モデルが示唆するような、ヒトの心は領域一般的な汎用の問題解決デバイスであるという考えを否定する
同時に進化心理学によって、あり得るすべての手がかりと選択肢をあてもなく探し求めるのではなく、我々の心が適応進化するにあたって、社会的および生態学的環境がどのような制約を課したのかを探るための有用な概念的枠組みがもたらされる
例えば、血縁淘汰と利他性に関する、Hamilton(1964)の重要な公式は、利他行動が進化するための前提条件は$ C< Brであるとしている
これは利他者にとっての適応度上のコスト($ C)が、受け手にとっての適応度上の利益($ B)、それも両者の遺伝的関連性(血縁度$ r)によって割り引かれた利益を下回る必要があることを意味する
進化心理学という心の科学の分野は、生物学、人類学、人工遺伝学、行動生態学の知見をもとに、意思決定問題の解決や心的適応に必要なデザイン上の特徴に関する洞察をもたらす
心理学と人間行動へのこのアプローチは、心理学的適応について、帰納的な仮説構築と、演繹的な仮説検証の両方を可能にする